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(2014/02/04)

今度は、学校でジャズ!

<2014年1月23日、松本養護学校>

私「ピアノを弾いてるのは伊佐津さゆりさんです。“サユリさん”って呼んでみて!」
子供たち「サユリさーん!」
私「フルートという楽器を吹いてるのは坂上領さん!」
子供たち「リョウさーん!」
私「さて、ピアノのお姉さんは何て名前だったっけ?!」
子供たち「サ、サ、サユリさーん!」
私「じゃあ、フルートのお兄さんは??」
子供たち「リョウさーん!」(笑)
私「正解!!何度でも名前覚えたか聞くよ。」(笑)

こんな気さくなトークも交えて行われた特別コンサート。長野県は松本養護学校の小学生と中学生のみんなに、我々の“信州ジャズ”の生演奏を聴いてもらいました。

今回の学校は、透き通るような空気と雄大な山々を見渡せる松本市今井という所にありました。あちらこちらに木の温もりを感じさせる校舎。グランドピアノがあるところがいいだろうと、その向かいの地区体育館を借りてコンサートは行われ、生徒と保護者と地域の方々、そして先生方で200名くらいの皆さんが集まってくれました。

やはりですね。初対面の方々の前で演奏するのは緊張します。ましてや子供たちがお客さんとなると、どこまで伝わるのか、我々も不安があるものです。私は個人的には何度も学校演奏をしていますが、毎回同じようなマニュアルで通じるものではありません。一人一人の目を見て話しかけるように演奏するようにしています。

大きな拍手で迎えてくれて、一曲目から楽しそうに興味深々といった表情の子供たち。ついつい我々も嬉しくなり、演奏も熱くなります。

体育館に響き渡るドラムソロ、叩いてて気持ちいい・・・みんなはどんな風に感じたかな。流れるようなピアノやフルートの音色・・・きっと驚いただろうな。

フルートのリョウさんは、サービス精神に溢れています。リコーダーやコップまで吹いてましたし、持参していた電子サックスを持ち出しステージ前に出て、思いっきりのけ反りながらの演奏。これにも拍手喝采! 身体が硬くブリッジまでとはいかなかったようですけどね。(笑)

子供たちが飽きないように、元気な曲をなるべく短めに、45分間をめいっぱい演奏しました。我々“信州ジャズ”は日本の唱歌もレパートリーにしているので、みんなが聴いたことあるだろう曲を多めに選曲しました。

私「皆さんの住んでいる長野に因んだ曲をやります。“お馬のおやこ”知ってる人!」
子供たち「ハーイ!」
私「ぽっくり、ぽっくりってメロディが何度も出てくるよ。聴いてみて。」

ちょっと難しいジャズのアレンジでも、みんな一緒に歌ったり手拍子してましたよ。ぽっくり、ぽっくり、って。

アンコールもいただきました。サユリさん、リョウさん、ケイさん、舞台袖からもう一度出てくるかなーって、ドキドキ。「出てきたー!」って、あの嬉しそうな顔。忘れません。

信州が生んだ唱歌“ふるさと”も、サンバ調のアレンジで演奏しました。こういう時は軽快なリズムの方がいい。でも「音楽はきちんと聴かないといけない」と思ってるのかな。演奏途中でドラムを一瞬止めて、「みんな、自由に身体動かしていいんだよ!」って言ったら、立ち上がって踊りだす子もいれば、手拍子で歌う子も。もうそれはそれは大騒ぎ。

子供たちは、感じたままに、表情やカラダで表現する天才。

我々の心も開放されます。そんな彼らが喜ぶ様子を、先生方がはしゃぐようにカメラで撮りまくっておられました。「この子達が音楽で楽しそう! ああ笑ってる! 踊ってる!」って、ステージのミュージシャンではなく(!)、子供たちをバチバチ撮影している(笑)。普段から大切に子供たちと接している先生方の、そんなお姿がまた印象的でした。

コンサートが終わった後、ステージに駆け寄る子供たちもいました。サユリさん、リョウさんの握手会です(笑)。私はフロアでまだ座ってる集団のところへ。めちゃくちゃ嬉しそうに握手を求めてくる子たち。恥ずかしくて目を逸らせて、つい下を向いてしまう子もいます。私から手を差し出すと、みんな笑顔になりました。そんな子供たちの様子も、また嬉しそうに先生方がカメラでバチバチ(笑)

朝からの舞台の仕込みでは極寒の体育館でしたが、この時はなんだか温かかったなぁ。。。我々がすっかり元気をいただきました。

やはり、子供たちはココロの表現の天才だ。

◆ ◆ ◆

今回の学校公演が実現できたのは、松本養護学校の松島先生の情熱のおかげです。昨年、我々の“信州ジャズ”のコンサートに感動され、すっかりファンになってくださって、その後も何度も通っては、この学校公演を熱望されました。校長、副校長、そして多くの先生方がいろんな条件をクリアして、コンサート実現へこぎつけてくださいました。貴重な機会をいただき、心から感謝申し上げます。楽屋にご用意くださった数々の温かい手料理にも感動しました。

またきっと伺いたいと思います。そして、いつか子供たちが、我々のコンサート会場にも足を運んでくれる日が来ることを願ってやみません。


<2014年1月22日、安曇野アートカフェ清雅>

この“子供たち向け”コンサートの前夜、お隣の長野県安曇野市でもライブがありました。こちらは“大人たち向け”と言った雰囲気でしょうか。

大正時代の庄屋さんの大蔵を改装したギャラリー・カフェ「清雅」。ピアノの響きが素晴らしく、“信州ジャズ”のCD「Field」もここでレコーディングしたほどです。

我々の表情も、お客さんや会場によって変わるものですね。地元の方々を中心に、ぎっしり満席。ホームに帰ってきた感のある、我々のリラックスしたトーク、迫力満点のライブを堪能していただきました。

いつもここに来ると、ふと思うんです。

電車のアクセスもない、安曇野の田んぼに囲まれたこの会場。正直、ライブをやるには便利とは言い難いですよね。でも、「人来るのかな、、」と心配していた2年前が懐かしい。結果的にはいつも満席で。これは本当に嬉しいことなんです。

この会場ならではの音場、一体感、温かさがあります。地元の方々が、我々を楽しみに待ってくださっているのが伝わります。皆さんに支えられ、応援していただける幸せ。ただただ感謝の気持ちで、ステージに向かうことができます。

我々“信州ジャズ”のメンバーは、ホールやライブハウスはもちろん、美術館やお寺やお城、デパート、ショッピングモールなど、それはそれはいろんな場所で演奏してきておりますが、今回のミニ信州ツアー。選曲も演奏内容もトークも、会場もお客さんも、いい意味でまったく好対照な2日間になりましたね。貴重な経験です。

帰宅途中には山沿いにある古い温泉にも立ち寄り、メンバーの坂上領くん、アシスタントの大輔くんとの男風呂チームは、2時間近くお湯に浸かりながら、その2日間の充実感にも浸ったのでした。

松本養護学校でのプレゼント。信州ジャズCD「Field」のジャケットと、色合いや雰囲気が似てますよね。大事な宝物がまた増えました。ありがとうございます。

<信州ジャズ>メンバー:
伊佐津さゆり(ピアノ)、坂上領(フルート、リコーダー、EWI)、平井景(ドラムス)