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(2013/04/23)

お寺で、信州ジャズ! ~春を味わう~

「うちのお寺の本堂で、コンサートって出来ますか?」

そんなお話が舞い込んできたのは、今年2013年に入った頃でした。檀家さん達はもちろん、地域の方々、そして全国の音楽ファンにまで、宗教の垣根を越えて広く「開かれたお寺」を目指したいとの想いが伝わってきました。

我々の動きは、素早いのです。早速、現地の下見をしてみると、大きな和室の本堂でした。畳の部屋なので、わんわんと余計に響きすぎないし、天井は高く、壁の反響も心地よい。ということで、すぐにGOサイン。

例年よりずいぶん早く桜が開花し、関東はもうすっかり春の装い。そんな2013年3月31日、千葉県は松戸市の萬福寺にて、そのコンサートは開催されました。

CDアルバムの共同プロデューサーでもある音楽ライター・島田奈央子さんが、このイベントのプロデューサーに立ち、音楽監督は私。そして私のアシスタント・白槻大輔くんが、楽器セッティングと音響PAを担当。あれ……、スタッフの人数が少ないですか? いえいえ、いつものことで慣れてます(笑)。

今回はさらに、お寺の関係者とボランティアさん達が、チケットの受付やドリンクの提供を担当してくださいました。が、それは大変な作業になりました。というのも、ご来場くださったお客さまが、予想をはるかに超える人数だったからです。

【お寺でジャズ】なんという大反響ぶりでしょう。。。畳敷きの本堂は、180名を超える、たくさんのお客さまで埋め尽くされました。

コンサートのタイトルは、「Something Jazzy ~“信州ジャズ・早春賦”」。上質で親しみやすい音楽を、広く一般の方々にも届けたい……という、イベント・プロデューサー島田さんの想いが込められていて、今回はまさにその名の通りのライブになりました。

今回の成功は、「萬福寺」ご住職とそのご家族の、まさに熱意の賜物でもあります。

萬福寺さんにとって、コンサート運営は初めての経験。当然、一から十まで分からないことだらけで、ずいぶんご心配されたと思います。打ち合わせの段階からその後も、もう連日のように質問攻め。

そこで、「当日のコンサート自体は、ステージのセッティングから演奏まで、こちらにお任せください。大丈夫です。チラシもこちらで作成します。とにかく萬福寺さんには、ライブ告知と集客をお願いします。」とお伝えすると、もう動きが早い早い!

檀家さんや地域の方へのお便りから始まり、新聞やインターネットサイト掲載の依頼、チラシの配布などなど。思い付かれたらすぐに行動されました。

「フライヤーが足りません。」もう、数千部も印刷したんですけど…!?
「大きなポスターを作ってください。」分かりました!すぐに作成します。
「ポスターは100枚くらい送ってください。」ええー?!そんなに貼ってもらえる所あるのー??

「お寺」って、こんなにも「つながり」があるかと、本当に感服いたしました。地域の方々とのご縁を大事にされてこられた、「歴史」を感じました。学ぶこと多し…です。

そんなことで、「お寺でコンサート」となると、いっそう「お客さん層」が違ってくるんですね。小さなお子様からご年配の方まで、本当に幅広い。

「ほとんど生の音楽を聴いたことがない」というライブ慣れしていないお客さまが大半で、「我々のことを、皆さんはご存知ない」という状況です。ある意味、とても“厳しい目と耳”が我々に向けられるのです。

そんなプレッシャーを感じながらも、“音”でそっと皆さんに語りかける。そんな気持ちで、私はステージに臨みました。すると、徐々に、身体を揺すって楽しまれる姿が……。後半になると、ますます盛り上がって、まさに老若男女を問わず、大きな拍手や声援が飛び交う。

これは、コンサートに携わる者として、この上ない喜びであります。この圧巻の光景に、スタッフ全員の目頭が熱くなりました。

皆さんに、このお寺の雰囲気と共に、強いインパクトを与えることができたと実感しました。


ちなみに、ステージのスピーカーやマイクは私のものです。音響PAの機材を自前で持ってるので、どこでもライブできるのです。

そして、なんと今回は、ステージ用の照明まで買ってしまいました。お寺の本堂は蛍光灯のライトだけなので、照明があった方が“感じ”が出るかなと思いまして。

ステージ照明の演出に関しては、昔からすごく気にするタイプでして、どんな風にライトが当たってるかなど、照明担当さんには細かく指示することも多い私。

しかし、餅は餅屋ですね。実は機材のことは、何も分かってなかった(笑)。一つ一つ調べて、購入するだけでも大変でした。

しかも、こちらの本堂のように、コンサート用の建物でない場合、基本的には家庭用の電源だったりするので、実際に点灯させると電力が足りなかったり、その影響でスピーカーにノイズが発生したり……。今まで、プロの照明さんがどうトラブルに対処していたか、記憶を総動員して、この日は無事に乗り切ることができました。

リハーサル中の私は、新調した“マイ・ライト”がマイ・ドラムにも無事に当たり、とてもご満悦の様子(笑)。

こんな風に、私は、ライトのことのみならず、会場全体のことがとても気になるので、本番直前まで、本当はエントランスの受付や門の外までも見回りたくなります。その気持ちをグッと抑え、楽屋で穏やかに本番を待つ。。。フリをする(笑)。

そして、コンサート開演になると、何事もなかったかのように、ステージに立つのでありました!

このドラム・セットだけでも大荷物なのに、スピーカーやマイクに、さらに照明ライトと……。全部、セッティングが大変なものばかりを選択している私の人生。これも性(さが)でしょうか。。。

バンドのメンバーは私のほかに、ピアノ・伊佐津さゆりさん、フルート・坂上領くん、そしてベースは安ヵ川大樹さん。うーん……、彼はずいぶんとお寺が似合いますね。ライブ中の紹介でも大うけでした(笑)。

「初めてのジャズコンサートの体験で、皆さんの演奏が心に響きました。音楽ってこんなに凄いんだ!と、何も分からない私でも感激してしまいました。あんなに素晴らしい演奏を聴かせてくださって、ありがとうございました。」そんな感想もいただきました。


今回、皆さんに楽しんでいただいたのは、【信州ジャズ】という新しい音楽です。美郷・長野県安曇野に在住のピアニスト・伊佐津さゆりさんの音楽は、そう呼ぶにふさわしい、大自然への感動がそこにあります。

昨年、この【信州ジャズ】と銘打ったプロジェクトを立ち上げてから、CD「Field」のアルバム制作を行い、それからはこの短期間で、ずいぶんといろんなライブ・コンサートを開催してきました。

話は少し逸れますが、これまでの活動もざっと詳細させてください。

こちらは東京のホールでの様子。

長野のホールでは、感動の大喝采。

ライブハウスでは、生音をダイレクトに感じられます。

ギャラリーの響きを活かしたライブも、臨場感たっぷり。

ときには、ボランティアで病院に訪れることも。

長野「まつもと市民芸術館」には、つい先月にも再訪しました。

そして、「お寺で…」となると、また違った趣きになるんですね。気持ちもどこか落ち着きます。ピアノの伊佐津さんも、この「和」の雰囲気がとてもお似合いでした。

「信州ジャズ」のサウンドは、ホールだけでなく、お寺にもピッタリ来るんだと実感できる、大変に貴重な機会となりました。


さて、この【信州ジャズ】のユニットは、今月末には本拠地・長野に登場します。

“お寺”つながりで、貴重なご縁をいただき、なんと!あの「善光寺」へ。

「善光寺へ訪れた方々に、“信州ジャズ”を聴いて、こちらの春を楽しんでいただきたい。」との、ありがたいお言葉。宗派を超えて、いま猛烈に準備してくださっています!

さらには、翌日、NHK総合(長野放送局)のテレビ番組に生出演の予定もあります。「ついに信州ジャズが、長野・善光寺とNHKのお墨付きに!!??」なんて、浮かれた気分の私たちでした。

二つの大仕事を終えた後、同じく長野市にあるカフェ・パーシモンでもライブを行います。間近でじっくり堪能したい方にはオススメの会場です。

【世界の寺院で、信州ジャズ】なんて、最高ですね。また一つ大きな夢が膨らみました。

信州で生まれた唱歌をアレンジしたり、日本が誇るその大自然への感動を音にする「信州ジャズ」。【和】の雰囲気と、ヨーロピアン調の【洋】のテイストとコンセプトを持った音楽。

このアイデンティティは、まさに世界中で活動する意味と価値を、我々に与えてくれるものと感じています。


※コンサート情報の詳細は、当サイト「スケジュール」でご確認ください。