←エッセイ・オピニオンのトップに戻る

(2015/10/27)

手作りコンサートで得られるモノ ~平井景スペシャル“五重奏団”◆展覧会と少年-TOUR2015-~

常々思っていることなんですけど、どんなコンサートも、「その会場でしか出来ない演奏というものがある」と思っています。もちろん、その会場の大きさ、音の響き方も大きく影響するのですが、“ムード”って言うのでしょうか、そこの雰囲気とか環境も、とても大事だなと思うのです。

そういう意味でも、いまプロデュースしている「平井景スペシャル“五重奏団”」の演奏会場は、何かとこだわりたいところ。先月9月に行ったツアー「展覧会と少年-TOUR2015-」も、音のイメージに合ったほんとに素敵な場所ばかりでした。

「私自身の音楽を表現するために、どんなメンバーと、どんな雰囲気でライブを開催しているのか」、そんなことをお伝えしたくて、ここに少し記したいと思います。

◆ ◆ ◆

ここは、愛知県・岡崎市「葵丘」(ききゅう)。絵画ギャラリーや、様々なアートの個展が設けられる文化施設です。天井は吹き抜け、全面ガラス戸の向こうは庭園。

この開放的でアートな空間は、自分の音楽にもぴったり。昨年に初めて下見をした瞬間から、そう感じました。お気に入りのこの葵丘では、昨年に続き、今回が二度目の登場です。

普段はこんな感じのスペースです。それをどうやってコンサート会場に変貌させるのか。

会場の雰囲気も、「演出のひとつ」。

私は「気に入った場所があれば、どこでもライブが出来るようしたい!」との思いから、PA音響設備や照明設備などを持っています。

今回のツアーでも、マイクやスピーカー、ライト、譜面台…などなど、楽器はもちろん、設備の全てを自前で持ち運んだのです。あ、さすがに(グランドピアノと椅子は除く)ですけどね。

◆ ◆ ◆

こちらは翌日の、福井県・勝山市「勝山城博物館」。なんとお城の天守閣、その中でのコンサートです。「グランドピアノが置かれた、巨大な絵画に囲まれたスペースがある」と、地元のファンの方が、コンサート実現に向けて立ち上がってくださったのが3年前。

その情熱と、我々の“どこでもコンサートができる”設備の体制が合致して、いまでは毎年の恒例行事になりつつあります。

ここもステージを組む前はこんな空間です。

地元スタッフの皆さんが、150脚もの椅子を運んで並べ、受付のセッティング。我々は楽器の配置を考え、スピーカーやマイク、照明のセッティングに勤しみます。

そうこうしていると、あっという間に本番を迎えます。

ステージでは思わず「勝山の皆さん、ただいま!」の第一声。大勢のオーディエンスから歓声が沸きました。こうして、“第二の故郷”が生まれる喜びをかみ締めています。

この日は、ゲストとして地元・福井のシンガーソングライター・佐々木詩菜さんにも、共演していただきました。

私が子供の頃から好きだった日本唱歌「この道」を、“五重奏団”の贅沢サウンドで。そして、詩菜さんが歌詞を書き下ろして、心に染み入る情景を歌ってくれた、私のオリジナル曲「空と手とココロ」。福井ならではスペシャル・コラボレーションまで実現して、「ご縁って素晴らしい!」と実感する一日となりました。

◆ ◆ ◆

ツアー車は、飛騨高山~上高地をガンガン走り抜けて、長野県安曇野市へ到着しました。そこで待ち受けるは、安曇野の田園風景と北アルプスのパノラマ風景。「池田町・創造館」のロビーには、燦々と日光が降り注ぎ、その絶景にまず圧倒されます。

ここ安曇野は、いま私がプロデュースしている“信州ジャズ”という音楽、そのピアニスト・伊佐津さゆりさんの本拠地です。その“信州ジャズ”の活動のおかげで、この数年は頻繁に長野へ赴く機会に恵まれ、こちらでもすっかり「ただいまー!」の気分になります。

このツアーで、この会場だけは音楽ホールでした。でも音響機材は、自前のものを持ち込んでいます。その方が早いので。

ロビーには絵画が飾られていますし、全面のウィンドウに広がる安曇野の絶景も、まさにそれは自然が織り成すアート。やはりここでも、気分は“展覧会”です。

地元の“信州ジャズ”応援団、サポーターの皆さんが協力してくださるので、たくさんある機材の搬入~セッティング~片付けも、ロビーでのチケット受付も、難なく乗り切れてしまいます。

“継続は力なり”。

ご縁がご縁を招き、回を重ねるたびに深くなる人との結びつき。

続けることで成る実はある、と感じます。ありがたい。

この日は、伊佐津さゆりさんにも参加していただき、前半は彼女の“信州ジャズ”のライブ、そして後半は平井景“五重奏団”、という盛りだくさんのコンサートになりました。

◆ ◆ ◆

このツアーは次で最終日。ツアー車は、広い長野県を横断し、軽井沢を抜けて、群馬県も突っ切り、いざ栃木県宇都宮市へ。

あ、途中の群馬県下仁田で立ち寄ったカツ丼。初めて食べた味で、非常に美味しくビックリ。各地で美味しいものに出会えるのも、旅の醍醐味です。

さて、千秋楽の会場は、宇都宮美術館に併設された開放的なレストラン「ジョワ・デ・サンス」。この空間が、やはり素敵なコンサート会場に早変わり!

この日の演奏は、最終回にありがちなお祭り騒ぎになることもなく、慣れで腑抜けた雰囲気になることも微塵もなく、最後まで実に落ち着いた、ジワジワと内に湧く盛り上がり。まさに、ツアータイトル「展覧会と少年・TOUR2015」の千秋楽に相応しい、タイトル通りのライブになりました。

緊張感と安心感が、とてもいいバランスで最後まで共存していて、連日続けて演奏してこないと到達できない領域ってあるんです。がんばってツアー組んで良かったなと、やり甲斐を実感しました。

ここは、なんとも気持ちのいい響きで、いただいた料理もめちゃくちゃ美味しいし、もう快適快適。シェフ店長さんも「何でも協力しますよ」と言ってくださっていて、これはまた必ず再演したい。

地元で応援してくださっている方たちがいるからこそ、宇都宮での私のコンサートは早7回目を数えることができました。次回はいつにしようかな、、、楽しみです。

◆ ◆ ◆

帰りの車で、ベースの村上聖にいさん(同じ関西人、敬愛をこめて“にいさん”と呼んでおります)が、

「今回のツアー、すごく良かったと思うわぁ」って、しみじみと。

自分達で機材と楽器を運んで、サポートしてくれる地元の方達とタッグを組んでの、“完全なる手作りコンサート”ツアー。それだからこそ生まれる、“一体感”と“充実感”があるんです。

それを聖にいさんは、連日感じていた、とおっしゃいました。労力は何倍も必要だけど、その甲斐は確実にある、ということですよね。

それから、こんな熱弁も。「このバンド、かなりイケルんとちゃうかなぁ。」って。

バイオリンとチェロがいるので、ゴージャスで贅沢なサウンドだし、曲はいいし、各メンバーのキャラも強力に立ってて盛り上がるし。

「この“五重奏団”を見に来て、損したーって思う人、いないと思うよぉ」って、嬉しいお言葉。

どんなリーダーもそうですが、けん引役ってやっぱり孤独だったりするので、こう言ってもらえると勇気が湧くもんです。

このツアーでも、また改めて感じ入りました。「自分一人では、何も実現しない。」

素晴らしいメンバーに感謝!

支えてくださる方々にも感謝!

そして、応援してくださる全ての皆さんに、
心から愛を込めて、、、ありがとう!!



平井景スペシャル“五重奏団”-展覧会と少年・TOUR2015-

  • 9/18 愛知・岡崎・葵丘(ききゅう)
  • 9/19 福井・勝山・勝山城博物館 ~お城でジャズVol.3~
  • 9/20 長野・安曇野・創造館
  • 9/21 栃木・宇都宮美術館・joie de sens(ジョワ・デ・サンス)

帆足彩(Violin)、島津由美(Cello)、榊原大(Piano)、村上聖(Bass)、平井景(Drums)

<ゲスト>
9/19 佐々木詩菜(Vocal,Guitar)、9/20 伊佐津さゆり(Piano)